シンガポールEmployment Pass(EP)2026年版:年収要件と申請手順
最終更新日: 2026年5月12日

シンガポールのEmployment Pass(EP)は、外国人専門職・管理職・技術職向けの就労ビザで、日本人がシンガポールで正規雇用されて働く際にもっとも一般的なルートです。本記事では2026年5月時点の年収要件、COMPASS制度、申請手順、必要書類、費用、よくある落とし穴までを実務目線でまとめます。
Last updated: May 12, 2026
EPの基本と2026年のポイント
EPはシンガポール人材省(Ministry of Manpower、MOM)が発給する就労パスで、原則として現地法人または現地登記企業が雇用主としてオンライン申請します。本人による直接申請はできません。
2026年に押さえておくべき変更点は次のとおりです。
- 2026年1月1日から、EPの更新申請にも新最低給与基準(一般S$5,600、金融S$6,200)が適用される。
- 2026年1月1日から、全EP申請で学歴の独立検証(Third-party verification、MOM認定検証会社経由)が必須化された。
- MOMはCOMPASS Self-Assessment Tool(SAT)を2025年12月1日に2026年ルールへ更新済み。
- 2026年2月の予算案で、2027年1月1日よりEP最低給与は一般業種S$6,000、金融業S$6,600へさらに引き上げ予定。
短期出張や観光で来星する場合の入国ルールは別枠で、シンガポール観光ビザ情報を参照してください。
年収(最低月額固定給与)の要件
EPの「固定給与(Fixed Monthly Salary)」とは、基本給に固定手当を足したもので、ボーナスや変動手当は含みません。年齢と業種で基準が変わります。
区分 | 一般業種 | 金融サービス業 |
|---|---|---|
若年層(目安として20代前半) | S$5,600〜 | S$6,200〜 |
45歳以上 | S$10,700〜 | S$11,800〜 |
2027年1月以降の新規・更新(予定) | S$6,000〜 | S$6,600〜 |
これらは「最低ライン」であって、年齢が上がるほど段階的に高い給与が必要になります。MOMはCOMPASSのC1項目で、業種・年齢別ベンチマークの上位33パーセンタイル以上を「20点」、下位を「0〜10点」として評価します。2025年9月以降、月給S$3,300以上の全従業員がPMETとして集計されるため、C1ベンチマークの母集団も以前より広くなっています。
なお、月額固定給与S$22,500以上の高所得者、WTO/FTA協定に基づく企業内異動者、1か月以内の短期業務はCOMPASS自体が免除されます。
COMPASS制度:40点を取るための実務
COMPASS(Complementarity Assessment Framework)は2点刻みのポイント制で、合格には合計40点以上が必要です。
基礎4項目(各0/10/20点):
- C1 給与:業種・年齢別ベンチマーク比較。
- C2 学歴:MOM認定の学位で10点、グローバル/地域トップ校で20点。日本のトップ校扱いは、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学、名古屋大学、九州大学、北海道大学、早稲田大学、慶應義塾大学、東京科学大学(旧東工大)。
- C3 多様性:申請者の国籍が雇用主のPMET人材の25%以上を占める場合は0点。日本人比率の高い日系企業では要注意。
- C4 現地雇用支援:シンガポール人PMET比率が業界平均と比べて高ければ加点。
ボーナス2項目:
- C5 Shortage Occupation List(SOL):2026年版ではアグリテック(代替タンパク食品応用科学者等)と医療職(臨床心理士等)が追加され、Cyber Risk Specialistsは除外。SOL職かつ年齢調整給与S$10,700以上、C3で10点以上を満たせば最長5年のEPが可能。
- C6 戦略的経済優先度:MOMが認定するパートナーシップに参加する企業に加点。
申請前にMOMのSelf-Assessment Toolでスコアを試算し、C3で0点になる場合はC1とC2でしっかり合計40点を確保できる構成にしてから申請するのが定石です。
必要書類チェックリスト
2026年1月以降、学歴の第三者検証が必須化されているため、書類準備のリードタイムが従来より長くなっています。最低でも申請2〜3週間前から動き出すのが安全です。
申請者(被雇用者)側で用意するもの:
- パスポート個人情報ページのコピー(残存有効期間6か月以上推奨)
- 最終学歴の卒業証明書および成績証明書(英文)
- MOM認定の検証会社による学歴認証レポート(Dataflow、Vault Verify等)
- 履歴書(英文、職歴・資格を含む)
- 直近の在職証明書または給与明細(必要に応じて)
- 顔写真(パスポートサイズ規格)
雇用主側で用意するもの:
- 雇用契約書(役職、固定給与、雇用開始日記載)
- 会社のACRA登記情報(自動連携)
- MyCareersFutureへの14日間の求人掲載記録(Fair Consideration Framework対応)
- 雇用主のCorpPassアカウント
申請ステップ(雇用主からの提出が前提)
- 求人掲載:MyCareersFutureに14日間以上、シンガポール人向けに求人を掲載(FCF要件)。
- 学歴検証の依頼:申請者が自身でMOM認定検証会社に学歴検証を依頼。所要1〜4週間。
- COMPASS自己評価:雇用主が最新のSATで40点以上を確認。
- EP eService申請:雇用主のCorpPassでオンライン申請。申請料S$105。
- In-Principle Approval(IPA)発行:通常審査は10営業日以内、シンガポール登記のない海外企業案件では最大8週間。IPAの有効期間は6か月。
- 入国・登録:申請者がIPAを持って入国(または既に滞在中なら継続)。雇用主がパス発行を申請(発行料S$225、必要に応じてマルチプルジャーニービザS$30)。
- 指紋・顔写真登録:MOMの指定センターで生体認証登録、その後カードが郵送される。
費用と有効期間
項目 | 金額(S$) |
|---|---|
EP申請料 | 105 |
パス発行料 | 225 |
マルチプルジャーニービザ(該当時) | 30 |
学歴検証費用(検証会社により変動) | 概ね100〜300 |
有効期間:
- 新規:最長2年
- 更新:最長3年
- テクノロジー等需要の高いスキル保持者(SOL該当等):最長5年
家族の帯同:DPとLTVP
EP保持者は家族をシンガポールに呼び寄せられますが、給与基準が別途あります。
- Dependant's Pass(DP):配偶者・21歳未満の未婚の子。EP保持者の月額固定給与S$6,000以上が必要。
- Long-Term Visit Pass(LTVP):事実婚パートナー、継子、両親など。EP保持者の月額固定給与S$12,000以上が必要(両親招聘の場合)。
DP保持者がシンガポールで就労するには、別途Letter of Consentまたは独自の就労パスが必要です。
上位パス:PEPとONE Pass
EP以外に、より柔軟な高所得者向けパスも存在します。
- Personalised Employment Pass(PEP):最低月額固定給与S$22,500、年間固定給与S$270,000以上の維持が必要。有効期間3年、更新不可、雇用主に紐づかない。6か月以上の無職状態でキャンセル。
- Overseas Networks & Expertise (ONE) Pass:月給S$30,000以上、有効期間5年、更新可能。海外申請の場合は雇用主の時価総額US$500 million以上または年間売上US$200 million以上が必要。2024年1月時点で取得者は約4,200人と限定的。2027年1月から「AI and Tech track」が新設され、現金と株式の組み合わせでS$30,000基準を満たせるようになる予定。
よくある落とし穴
- C3多様性で0点になるパターン:日系企業で日本人PMETが25%以上を占めるケース。給与・学歴で40点に届くよう逆算して採用条件を設計する必要がある。
- 学歴検証の遅延:2026年から必須となった第三者検証は、卒業校の応答が遅いと数週間かかることがある。新卒・第二新卒は早めに着手。
- MyCareersFuture掲載漏れ:14日間の求人掲載を怠るとFCF違反で却下される。
- 45歳以上の昇給見落とし:転職時の年齢で基準が大きく変わる(一般S$10,700、金融S$11,800)。前職の額面そのままでは通らないことがある。
- 更新タイミングの基準切替:2026年1月以降、更新でも新基準が適用されるため、長年勤務している人ほど昇給交渉が必要。
- IPA有効期間の管理:IPAは6か月で失効する。入国・着任スケジュールを逆算する。
FAQ
Q. 日本から個人でEPを申請できますか。 A. できません。シンガポール現地法人の雇用主がCorpPass経由で申請する必要があります。
Q. 内定前にCOMPASSスコアを試算できますか。 A. 可能です。MOMのSelf-Assessment Toolで給与・学歴・国籍・雇用主名を入力してシミュレーションできます。
Q. EPからPRに切り替えられますか。 A. EP保持中は永住権(PR)申請が可能です。ただし審査基準は別で、職歴・収入・家族状況などが総合評価されます。
Q. ワーキングホリデーのような短期就労制度はありますか。 A. シンガポールには日本人向けのワーホリ協定はありません。豪州など他国の制度についてはワーホリビザ申請手順を参照してください。
Q. シンガポールで日常生活に英語は必須ですか。 A. 公用語の一つで、職場でも生活でも英語が中心です。実務レベルの英語力があるかは、業務効率と人間関係の両面で大きな差になります。学習方針については英語で流暢に話せる方法が参考になります。
シンガポール赴任が決まったら、英語(およびチームによっては中国語)を実コンテンツで鍛えておくと業務立ち上げがスムーズです。Netflixや現地ニュースを教材化して語彙を伸ばしたい人はtry Migaku。