日本人がアメリカで確定申告する手順と必要書類まとめ
最終更新日: 2026年5月25日

アメリカで働く・暮らす日本人は、米国税法上の「居住者」か「非居住者」かによって提出する申告書が変わり、Form 1040またはForm 1040-NRを期限内にIRSへ提出する必要があります。2025課税年度分(2026年提出)の通常期限は2026年4月15日、米国外居住者は自動で6月15日まで延長されます。
Last updated: May 25, 2026
まず判定:あなたは米国税法上の「居住者」か「非居住者」か
アメリカの確定申告は、ビザの種類ではなく「税務上の居住性」で扱いが分かれます。日本人駐在員・留学生・グリーンカード保持者で、それぞれ申告書が異なります。
判定の中心となるのが 実質的滞在テスト(Substantial Presence Test) です。次の両方を満たすと米国居住者扱いとなります。
- 当年に米国で31日以上滞在している
- 「当年の滞在日数 × 1 + 前年の滞在日数 × 1/3 + 前々年の滞在日数 × 1/6」の合計が183日以上
たとえば駐在3年目のビジネスパーソンは、ほぼ間違いなく米国居住者として全世界所得の申告義務が生じます。一方、F・J・M・Qビザの学生・研究者は「免除個人(exempt individual)」として一定期間(学生は5年、教師・研修生は6年中2年)滞在日数のカウントから除外され、非居住者として扱われます。
グリーンカード保持者は滞在日数に関係なく常に居住者です。短期出張のみで米国滞在が183日未満の場合は、Form 8840で Closer Connection Exception(より緊密な関係の例外)を主張し、非居住者として申告できる場合があります。
居住者と非居住者で異なる申告書と税負担
区分 | 主な対象 | 提出書類 | 課税範囲 | 基礎控除 |
|---|---|---|---|---|
米国居住者 | 駐在員、グリーンカード保持者、長期滞在者 | Form 1040 | 全世界所得 | 単身15,750ドル、夫婦合算31,500ドル(2025年) |
非居住外国人 | 短期駐在、留学生(5年以内のF1等) | Form 1040-NR | 米国源泉所得のみ | 原則なし |
非居住外国人の場合、米国事業に実質的に関連する所得(ECI)は米国市民と同じ累進税率で課税され、配当・利子などのFDAP所得は租税条約適用がない限り一律30%の源泉徴収となります。日米租税条約により減免される項目もあるため、Form W-8BENの提出状況とあわせて確認してください。
申告前に揃える書類チェックリスト
申告ソフトに入力する前に、以下の書類を手元に揃えておくと作業がスムーズです。
- 身元・番号関連
- SSN(社会保障番号)またはITIN(個人納税者番号)
- パスポート、ビザ、I-94記録
- 入国・出国日のリスト(滞在日数テスト計算用)
- 米国所得関連
- Form W-2(給与)
- Form 1099各種(利子、配当、業務委託、株式売却等)
- Form 1042-S(非居住者向け源泉徴収報告)
- 控除・税額控除関連
- 住宅ローン利息のForm 1098
- 医療費、寄付金、子育て費用の領収書
- 州税・地方税の支払記録
- 日本側所得・資産関連(居住者の場合)
- 日本の給与・年金・不動産所得の証明
- 日本の銀行口座・証券口座の年間最高残高記録
- 日本で支払った所得税の証明(外国税額控除用)
日本の銀行口座を保有する米国税務上の居住者は、年間最高残高合計が10,000ドルを超えた年は FBAR(FinCEN Form 114) の電子提出が必要です。さらに、単身者で年末200,000ドル超または年中300,000ドル超の外国金融資産を持つ場合は Form 8938(FATCA報告) を確定申告書に添付します。
ITINがない人の最初のハードル:Form W-7
SSNを取得できない配偶者・子ども・短期就労者などは、申告のためにITINを取得する必要があります。
- Form W-7をIRSに提出(手数料は無料)
- パスポートの原本または発行機関の認証コピーを添付(公証コピーは不可)
- 標準処理期間は7週間、繁忙期(1月15日〜4月30日)や海外からの申請は9〜11週間
- 連続3年間連邦確定申告に使用されないと失効
日本から申請する場合は、Certifying Acceptance Agent(CAA)またはIRS Taxpayer Assistance Centerでパスポート認証を受けると、原本を国際郵送するリスクを避けられます。
申告の手順:7ステップ
- 居住性を判定:滞在日数を集計し、Form 1040かForm 1040-NRかを決める。
- 番号を準備:SSNがない家族はForm W-7でITINを先行申請。
- 所得情報を集計:W-2、1099、1042-S、日本側所得を一覧化する。
- 控除と税額控除を確認:外国稼得所得除外(Form 2555、2025年は1人130,000ドルまで)、外国税額控除(Form 1116)、子女税額控除などを検討。
- 必要な追加書類を作成:FBAR、Form 8938、Form 8843(免除個人)、Form 8840(Closer Connection)などを該当者は準備。
- 電子申告または郵送:1040-NRを郵送する場合は Department of the Treasury, Internal Revenue Service, Austin, TX 73301-0215 宛。
- 納税または還付確認:納税は4月15日が原則期限。1040-NRの還付は最大6か月かかることを見込む。
IRSは2025課税年度の受付を2026年1月26日に開始し、2026年シーズンよりDirect File無料プログラムを終了しています。日本側所得や国際フォームを含む申告は、有料の商用ソフトまたは国際税務の専門家に依頼するのが現実的です。
期限・延長・予定納税のスケジュール
2025課税年度(2026年提出)の主な期日は次のとおりです。
内容 | 期限 |
|---|---|
Form 1040 通常期限 | 2026年4月15日 |
米国外居住者の自動2か月延長 | 2026年6月15日 |
Form 4868提出による延長 | 2026年10月15日 |
特別事情による追加延長 | 2026年12月15日 |
Form 1040-NR(源泉徴収あり) | 2026年4月15日 |
Form 1040-NR(源泉徴収なし) | 2026年6月15日 |
Form 8843単独提出(所得なしの免除個人) | 2026年6月15日(オースティン宛郵送) |
FBAR | 4月15日(自動的に10月15日まで延長) |
申告期限が延長されても 納税の期限は4月15日のまま という点に注意してください。延長は「書類提出の延長」であって「納税の延長」ではありません。
非居住外国人で予定納税が必要な場合、2026年のForm 1040-ES (NR)期限は4月15日、6月15日、9月15日、2027年1月15日の4回です。
日本側の所得税確定申告は2月16日〜3月15日と米国の4月15日に近接しているため、両国の申告を並行して進めるスケジュール管理が欠かせません。日本での生活費感覚と米国での実支出のギャップを把握しておくと、家計と納税のバランスが見えやすくなります。アメリカでの生活コストについてはアメリカの生活費と家賃も参考になります。
期限後申告・誤申告のペナルティ
アメリカの税務罰則は重く、日本の感覚で軽視すると後から大きな出費になります。
- 遅延申告罰則(failure-to-file):未納税額の1か月あたり5%、最大25%。60日超遅延の場合の最低罰則は525ドルまたは未納税額の100%のいずれか少ない方。
- 不払い罰則(failure-to-pay):未納額に対し1か月あたり0.5%、最大25%。
- 未払税金への利子:2026年第1四半期で年7%・日次複利。
- FBAR罰則:2023年のBittner最高裁判決以降、非故意違反は「フォームあたり」適用となり、毎年インフレ調整される。最新額はFinCEN公式情報を確認。
日本人がはまりやすい落とし穴
- 「米国に給与がないから申告不要」と思い込む:免除個人の留学生でも、所得ゼロでもForm 8843の提出義務がある。
- 日本の口座を申告漏れ:FBARとFATCAは別物。両方の閾値判定を毎年行う必要がある。
- 二重課税の放置:日米租税条約と外国税額控除を使えば取り戻せる税金を放置している例が多い。
- 州税を忘れる:連邦税だけで完結すると思い込む人が多いが、ニューヨーク州・カリフォルニア州などは独自の申告と税率があり、州税務当局の公式サイトを別途確認する必要がある。
- 帰国時の出国手続き漏れ:非居住外国人として米国を離れる際は、Sailing Permit(Form 1040-C/2063)の要否も確認。
- ITIN失効:3年使わなかったITINは失効しているため、申告前に有効性をチェック。
よくある質問
Q. 日本に帰国した後も米国の確定申告は必要ですか?
A. グリーンカード保持者は放棄するまで全世界所得の申告義務が続きます。非居住者でも、米国源泉所得(不動産賃料、米国株配当等)があればForm 1040-NRの提出が必要です。
Q. 駐在員ですが、会社が税務サポートをしてくれます。自分で何かすべきことは?
A. 会社契約の税理士でも、日本の銀行口座情報やFBAR対象の口座は本人申告が前提です。残高記録は自分で年単位で保管してください。
Q. 日本で払った所得税は米国で控除できますか?
A. はい。Form 1116で外国税額控除として申請するか、給与所得についてはForm 2555で外国稼得所得除外(2025年は1人130,000ドルまで)を選択できます。両者は併用ルールがあるため、どちらが有利かは年ごとに試算が必要です。
Q. 1040-NRはe-Fileできますか?
A. 一部の商用ソフトが対応していますが、郵送提出も依然多く、その場合の送付先はテキサス州オースティンの処理センターです。還付には最大6か月かかります。
Q. 米国の永住権や他国の長期滞在資格と税務の関係は?
A. 永住権の取得は税務上の居住性に直結します。シンガポールへの移住を検討している方はシンガポール永住権の取得条件を、英国配偶者ビザを検討中の方はイギリス配偶者ビザの要件も参照してください。
アメリカで生活する以上、IRSや会計士、職場の人事担当者とのやり取りはすべて英語で進みます。税務用語に慣れた英語力があると、駐在生活全体の負担が大きく減ります。英語の実力を生活と仕事のレベルまで引き上げたい方は、try Migaku で実際の英語コンテンツから学ぶ方法を試してみてください。