イギリス永住権ILR取得条件と5年ルール・不在日数の数え方
最終更新日: 2026年5月26日

イギリスのILR(Indefinite Leave to Remain/永住権)は、就労ビザなどで5年間継続して合法的に滞在した人が申請できる無期限の在留許可です。中心となる「5年ルール」と、各12か月で180日を超えない不在日数の数え方、そして2026年秋に予定されている制度改正の影響を、Skilled Workerを軸に整理します。
Last updated: May 26, 2026
「5年ルール」とは何か
ILRの「5年ルール」とは、Skilled Worker(旧Tier 2)など対象ビザで5年間連続して英国に居住・就労した人がILRを申請できる仕組みのことです。資格取得期間が異なるルートもあります。
- Skilled Worker、Health and Care Worker、配偶者(Family)ルート: 5年
- Innovator Founder、Global Talent: 3年
- 旧Tier 1(Investor等の一部): 2〜3年
- 英国生まれの子の英国市民の親に関する一部ルート: 別途規定
5年ルートを使えるのは、ビザカテゴリーをまたいでも「ILR対象ルートで合計5年継続」していて、要件を満たすケースに限られます。資格期間の完了予定日の28日前から申請を提出できる点も実務上重要です。
なお2026年3月1日、Home SecretaryのShabana MahmoodはILRの標準資格期間を5年から10年へ倍増する方針を確認しており、2026年秋の施行が予定されています。施行までは現行の5年ルートが有効です。
ILR申請の主な要件(Skilled Workerの例)
Skilled Worker経由でILRを申請する場合、申請時点で次のすべてを満たす必要があります。
- 連続5年間、合法的な滞在資格で英国に居住していること
- 各12か月で英国外不在が180日を超えていないこと
- 申請時の年収が £41,700 または職種のgoing rateのいずれか高い方以上であること(2025年7月22日以降の閾値)
- 最低時給 £17.13 を満たすこと
- Life in the UKテストに合格していること
- 英語能力 B1 以上(CEFR)を証明できること
- グッドキャラクター要件を満たすこと(犯罪歴、税務、移民法違反など)
- 雇用主が引き続きスポンサーとして雇用を継続する意思を持っていること
英語要件は、2026年1月8日からSkilled Worker等の新規ビザ申請ではB2に引き上げ済みですが、ILR申請時点の要件は現在もB1です。ILRのB1からB2への引き上げは2027年3月26日からの予定です。
イギリスのビザスポンサー企業を確認するときは、雇用主がILR時の給与水準まで支払えるかを早めに見極めておくと安全です。
不在日数(180日ルール)の数え方
ILR審査で最も誤解されやすいのが、英国外不在日数の数え方です。原則は「申請日からさかのぼる各12か月のローリングウィンドウで180日を超えない」というものです。暦年(1月から12月)ではない点に注意してください。
数え方の実務ポイントは次のとおりです。
- 出国日と入国日の両方をカウントする運用が一般的(保守的に計算するのが安全)
- 5年間トータルではなく、5年のうちのどの12か月を切り取っても180日以内である必要がある
- 出張、休暇、家族の事情、リモートワーク中の長期帰国もすべて加算対象
- パスポートのスタンプ、航空券、Eチケット、雇用主のレターで証拠を整える
以下は単純な例です。
期間 | 不在合計 | 判定 |
|---|---|---|
2021/06〜2022/05 | 120日 | OK |
2022/01〜2022/12 | 190日 | NG(やり直し) |
2023/04〜2024/03 | 175日 | OK |
2022年単独で190日になっている場合、その12か月ウィンドウが基準を超えるため、超過が解消する日まで申請を後ろ倒しにする必要があります。
ILR取得後も、英国を2年連続で離れるとILRは自動的に失効します(EU Settlement SchemeのSettled Status保持者のみ5年)。
必要書類チェックリスト
Skilled WorkerからのILR申請で典型的に求められる書類です。
- 現在および過去5年間のパスポート全ページのスキャン
- BRP(Biometric Residence Permit)またはeVisaのアカウント情報
- 雇用主からの最新レター(職位、給与、雇用継続の意思、勤続期間)
- 直近12か月分の給与明細とそれに対応する銀行明細
- P60(過去5年分)
- Life in the UKテスト合格証明(Unique Reference Number)
- 英語能力証明(B1以上の認定試験、または該当する学位の証明)
- 過去5年間の英国外渡航リスト(日付、目的、行先)
- 配偶者・子を同時申請する場合は婚姻証明・出生証明など
2026年4月8日以降は既登録の生体情報の再利用が拡大されており、対面アポイントメントが不要になるケースが増えています。
申請料金と処理時間(2026年版)
2026年4月8日に料金改定が行われています。
項目 | 金額(2026年時点) |
|---|---|
ILR標準申請料 | £3,226/人 |
Priority Service(5営業日目標) | £3,726/人 |
Super Priority Service(翌営業日目標) | £4,226/人 |
Life in the UKテスト受験料 | £50 |
市民権セレモニー料(後日の帰化時) | £130 |
子の帰化料 | £1,000(£1,214から減額) |
標準処理の目標は6か月以内、Priorityは5営業日、Super Priorityは翌営業日です。なお2026年4月8日より前に提出された申請には旧料金 £3,029 が適用されます。
Immigration Health Surcharge(IHS)はILR申請には不要です。IHSは一時的なビザ(成人 £1,035/年、学生・YMS等 £776/年)に課されるもので、ILR申請者は支払いを免除されます。
よくある落とし穴
- 不在日数の自己計算ミス: 暦年で計算してしまい、ローリング12か月では超過しているケース。出入国日両方をカウントする保守的計算を推奨。
- 給与閾値の見落とし: 2025年7月22日以降の £41,700 と職種別going rateの「高い方」を満たさず却下されるケース。
- Life in the UKテスト未受験: ILR提出時に合格番号が必須。直前に予約しようとして混雑で間に合わないことがある。
- 税務の不一致: 自営・副業がある場合、HMRC申告とILR申請書の収入記載に齟齬があると却下リスクが高まる。
- グッドキャラクター違反: 軽微な交通違反でも申告漏れがあると問題になる。2025年11月11日導入の新「Part Suitability」フレームワークで審査が厳格化されている。
- ビザ切れ後の申請: 現行ビザの期限内に提出する必要があるが、資格期間完了の28日前から提出可能なので余裕を持って準備する。
- 2026年秋の改正待ち: 5年ルートが利用できるうちに申請を済ませる方が安全。改正後のearned settlementモデルは申請前3〜5年で年収 £12,570以上などの要件が議論されている。
FAQ
Q. 産休・育休中の期間は不在日数に含まれますか。
A. 英国内で過ごしていれば不在には含まれません。出産のため海外に長期滞在した場合は、その日数が不在としてカウントされます。
Q. コロナ期の渡航制限による不在は除外されますか。
A. 過去の特例扱いが終了しているため、現在の申請では原則として通常どおりカウントされます。個別事情はカバーレターで説明します。
Q. ILR申請中に転職できますか。
A. 申請決定までは現在のスポンサー雇用を継続するのが安全です。給与閾値の証明に支障が出る転職は避けるべきです。
Q. 5年ルールは本当に10年に変わるのですか。
A. 2026年3月1日の政府方針として表明されており、2026年秋の施行が予定されています。「Keep 5-Year ILR」請願は2026年5月時点で232,000筆を超えていますが、施行を止めるかは未確定です。詳細はGOV.UKで確認してください。
Q. 難民ステータスからのILRはどうなりますか。
A. 2026年3月2日以降の難民申請者は30か月ごとの更新が必要な一時的保護ステータスとなり、ILR資格は20年後に変更されています。それ以前の申請者は従来ルールが適用されます。
Q. ILR取得後、海外赴任することになったら。
A. 英国を2年連続で離れるとILRは失効します。Returning Resident Visaの再取得が必要になる場合があるため、長期出国前にプランを立てましょう。
申請前に確認しておきたいこと
- 雇用契約と給与が £41,700(または職種going rate)を超えていること
- 過去5年のすべての12か月ウィンドウで不在180日以内
- Life in the UKテスト合格、英語B1証明の準備
- パスポート全ページと給与・税務書類の整合性
- 2026年秋の制度改正前に申請可能かのタイムライン管理
イギリス生活の実情を知るうえでも、ILRは長期計画の節目です。隣国の手続きが気になる方はアイルランドの長期滞在手続きも参考になります。
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