Subclass 186 ENS雇用主指名永住ビザの3ストリームと申請要件
最終更新日: 2026年5月25日

オーストラリアのSubclass 186 ENS(Employer Nomination Scheme)は、現地の雇用主に指名された熟練労働者が永住権を取得できるビザです。本記事では、3つのストリーム、申請要件、2026年時点の手数料、処理時間、そしてよくある落とし穴までを実務目線で整理します。
Last updated: May 25, 2026
Subclass 186ビザとは何か
Subclass 186は、オーストラリアの雇用主が外国人労働者を「指名(Nomination)」し、その指名に基づいて申請者が永住権を取得する制度です。申請が認められれば、本人と家族は無期限にオーストラリアで居住・就労でき、付与日から5年間は再入国可能な旅行施設が付帯します。
他の主要な雇用主スポンサービザであるSubclass 482(TSS)が一時就労ビザであるのに対し、186は最初から永住資格を付与する点が決定的に異なります。両者の使い分けについてはSubclass 482 TSS就労ビザとの比較も参照してください。
186ビザの大きな特徴は、いずれのストリームでも労働市場テスト(LMT)が不要である点です。これは指名段階での雇用主側の負担を軽減します。
3つのストリームと選び方
186ビザは目的と申請者の状況に応じて3つのストリームに分かれます。
Temporary Residence Transition(TRT)ストリーム
すでにSubclass 482または457ビザを保有し、指名雇用主の下で少なくとも2年間フルタイム勤務した方が対象です。年齢上限がない点が最大のメリットで、45歳以上の中堅人材にとって現実的な永住ルートとなります。
Direct Entry(DE)ストリーム
オーストラリア国内での就労歴を要さず、海外から直接申請できるストリームです。申請時に45歳未満(一部例外あり)であること、Core Skills Occupation List(CSOL)掲載職種で3年以上の関連職務経験、肯定的なスキル評価が求められます。CSOLは2024年12月に導入され、現在456職種を含みます。
Labour Agreement(LA)ストリーム
政府と特定の雇用主または業界団体との間で締結された労働協定に基づくストリームです。一般的な職種リストの枠外にある人材を確保する手段として用いられます。後述のとおり、3つのうち最も処理が早い傾向があります。
申請要件と必要書類
共通して整える書類は以下のとおりです。
- パスポート(全申請者分)と出生証明書
- 学歴・職歴の証明(卒業証明書、雇用証明書、給与明細、納税記録)
- スキル評価結果(Direct Entryで必要、職種に応じた評価機関)
- 英語能力証明(IELTS各バンド6.0以上、または同等のテスト結果。受験可能テストと最低スコアは2025年8月7日施行のルールに基づく)
- 健康診断(パネルドクターでの受診)
- 無犯罪証明書(10歳以降に12か月以上居住した全ての国)
- 雇用主による指名書類、Position Description、給与提示書
指名側では、雇用主が職種・地域に応じた年間市場給与率(Annual Market Salary Rate、AMSR)を支払うことが求められ、最低賃金閾値であるCore Skills Income Threshold(CSIT)も満たす必要があります。CSITは2025年7月1日から2026年6月30日までに提出される指名についてAUD 76,515で、2026年7月1日からはAUD 79,499へ引き上げられる見込みです(内務省確認待ち)。
申請手数料と処理時間
2026年5月時点の主な政府手数料は以下のとおりです。
項目 | 金額(AUD) |
|---|---|
主申請者ビザ申請料 | 4,770 |
追加申請者(18歳以上) | 2,385 |
追加申請者(18歳未満) | 1,190 |
雇用主の指名申請料 | 540 |
SAF課徴金(年商1,000万豪ドル未満の小規模事業者) | 3,000 |
SAF課徴金(年商1,000万豪ドル以上) | 5,000 |
これらに加えて、健康診断費用、警察証明取得費用、スキル評価料、移民エージェント費用などが別途発生します。2026年7月1日のインデックス改定で各種金額が変更される可能性があるため、申請直前に内務省公式サイトで確認してください。
処理時間は2026年2月2日に更新されたDHAデータに基づき、50パーセンタイルと90パーセンタイルの2基準で測定されます。
- Direct Entryストリーム:実勢で12〜20か月以上、現在最も滞留
- TRTストリーム:90パーセンタイルで18〜19か月
- Labour Agreementストリーム:平均5〜9か月
処理はMinisterial Direction No. 105に基づく優先順位制で行われ、地域・医療・教育職種、および認定スポンサー(Accredited Sponsor)の案件が優先されます。2025年10月31日時点でのESPDチームの公表によれば、地域・医療・教育職種は2025年4月提出分、認定スポンサー案件は2024年10月提出分が審査中とされていました。
2025-26会計年度の永住ビザ全体の上限は185,000人で、うち雇用主指名カテゴリ(Subclass 186を含む)の割当は約44,000人です。
申請の流れ
186ビザの申請は通常、以下の順序で進みます。
- 雇用主が指名要件(事業の正当性、ポジションの真正性、AMSR・CSITの充足)を確認
- 必要に応じてスキル評価を申請(Direct Entryの場合、評価機関により3〜6か月)
- 英語テストを受験し、所定スコアを取得
- 雇用主がImmiAccountを通じて指名(Nomination)を提出、SAF課徴金を納付
- 申請者がビザ申請(Visa Application)を提出。指名と同時または後でも可
- 健康診断・警察証明を提出
- 内務省からの追加情報要求(s56リクエスト)に対応
- 決定通知の受領
申請中に現行ビザが失効しても、申請受理時にBridging Visa A(BVA)が自動的に有効化されるため、オーストラリア国内に合法的に滞在し続けることができます。ただし出国予定がある場合はBridging Visa Bへの切り替えが必要です。
よくある落とし穴
- 指名職種と実務内容の不一致:Position Descriptionと実際の業務内容が乖離していると、指名が却下される、あるいは取消対象となります。
- AMSRの過小評価:CSITだけを満たしていても、地域・職種の市場給与率を下回ると指名は通りません。求人サイトや業界統計に基づく客観的根拠が必要です。
- 2年間の雇用要件の解釈ミス(TRT):「フルタイム」「同一雇用主」「同一職種」の3点を満たす必要があり、転職や休職期間の扱いに注意が必要です。
- スキル評価の有効期限切れ(Direct Entry):評価結果には有効期限があり、申請時に失効しているとやり直しになります。
- 英語テスト結果の期限:申請日から3年以内の結果が原則です。
- 健康診断のタイミング:早すぎても遅すぎても再受診となるリスクがあるため、内務省からのリクエストに合わせて受診するのが安全です。
よくある質問
Q. Direct EntryとTRT、どちらが有利ですか。
A. すでに482ビザで2年以上勤務している方はTRTが圧倒的に有利です。年齢上限がなく、スキル評価も不要なケースが多いためです。海外在住で初めて申請する場合はDirect Entry一択となります。
Q. 家族も同時に永住権を取得できますか。
A. 配偶者および扶養する子は同一申請内で含めることができ、承認されれば同じく永住資格を得ます。追加申請料は18歳以上AUD 2,385、18歳未満AUD 1,190です。
Q. 申請却下となった場合の救済策はありますか。
A. 行政不服審判所(ART、旧AAT)への異議申立てが可能なケースがあります。期限が厳格(通常通知から21日または28日以内)なので速やかに移民弁護士または登録エージェントに相談してください。
Q. 186ビザと他国の永住権を比較したい場合は。
A. アジアでの選択肢としてシンガポールPR永住権取得条件も比較対象になります。オーストラリアのビザ制度全般の俯瞰にはオーストラリアビザ制度の基礎知識も参考になります。
Q. ビザ承認後、すぐにオーストラリアを離れても問題ありませんか。
A. 永住権の身分は維持されますが、再入国可能期間は付与日から5年間です。5年以上海外滞在が必要な場合はResident Return Visa(RRV、Subclass 155または157)の申請が必要です。
最後に
186ビザは制度設計が複雑で、雇用主側の義務と申請者側の要件が絡み合います。最新の手数料・閾値・職種リストは2026年7月1日に改定される見込みのため、申請直前にオーストラリア内務省公式サイトで必ず確認してください。
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